「盆」

今日は、母の実家に来ている。
昼過ぎに着き、夕立の後、涼しくなったので、皆で墓参りに行った。
墓参りから帰ったら、そのまま夕ご飯となった。親類と、皆ですき焼きである。
そして、夕食の後、お腹いっぱいの腹を抱えて、一人、散歩に出た。街灯が少なかったが、それでも、月明かりで充分に明るかった。遠くの山の影が、くっきり浮び上がっていた。在所の中の道を、近くの川まで歩いてみた。歩きながら、この道を少女時代の母も歩いたのかなと思うと、不思議な気がした。少女の母は、どんなだったろうか。

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小説を書きたい。
世界に無い小説を書きたい。

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相沢は、夢の女のことを考えた。女は、母に似ていた。温かさが、そっくりだった。
「あなたには何だってできる」
女は、こう言った、しかし、いまだに書けないでいる。
時間が無い。