思い出す。私は、彼女と琵琶湖畔のベンチに座って一夜を明かした。彼女は、いろんな夜景を見たけど琵琶湖の夜景が一番きれいだと思うと言った。実際、目の前の夜景はきれいだった。決して多くはない街の明かりが、湖面に映り、遠くの山々は、上の方がぼんやりと明るかった。目を、湖の奥に転じると、暗闇がどこまでも広がっていた。暗闇には、それでも柔らかさがあるように思えた。夜の湖でも、私は、その時怖いと感じなかった。彼女もまた、安心しているらしかった。
彼女は、琵琶湖が本当に好きのようだった。だから、琵琶湖が大好きな私に、親しみを感じてくれたのかもしれない。その夜景を見たのは、私達が大学の夏休みの時だった。その一週間前に、同じ場所で大きな花火大会があった。約束しておきながら、私は急な用事があり行くことができなかった。結局彼女は、浴衣を着て他の友達と行った。本当は、私と二人で浴衣を着ていくはずだった。