大学近くの公園では、早咲きの桜が、すでに満開だった。
相沢は、仲の良い友人と、会場で並んで座った。学長の式辞は、長く退屈なものであった。辺りを見回すと、久しぶりの顔がたくさんある。しかし、そのほとんどとは話したことすらもなかった。相沢は、学科で知る人が少なかった、だから、隣に座る友人は、相沢には珍しい人であった。
式の最後、結局、カレッジソングは覚えていないので歌えなかった。

振袖姿を見て、声をかけたいと思っていた。会って、久しぶりに会話したかった。彼女ならきっと、ネクタイを見てくれるだろうと思っていた。しかし、思う人を見つけることは出来なかった。落胆した。来てくれた部活の後輩達と写真を撮り、大学をあとにした。卒業記念パーティーでは、なぜか相沢は幹事の一人だったからだ。会場に、皆より先にいく必要があった。大学から離れたところにあるそのホテルに、タクシーを拾って行った。

こうして、思っていたよりも味気なく卒業式は終わった。
それ以降大学には行っていない。