学生時代を通じて、最も親しく(といっても友人はそれほど多かった訳ではないが)付き合ったのが、彼女だった。彼女は、私の話に注意深く耳を澄ませてくれ、私が話し終えると、いつでも、「そうなの、相沢君は、そういうことを考えてるのね」と言った。それだけだったがしかし、私は嬉しかった。
そんな彼女が、この日突然、東京に来ると言った。会社を休んで、遊びに来るらしい。バスターミナルの近くの喫茶店で待ち合わせることにした。私は会社帰り、平日の、午後七時を少し過ぎていた。