「一つ教えてあげる。女にとってね、結婚の相手はそんなに重要じゃないの。誰でもいいわけじゃないけど、運命の人なんていないの。女にとっては、恋愛と結婚は別。たった一つの大切な恋愛の思い出で、その後、別の結婚を生きることだって出来るの。そういうものなの」
「…」返す言葉がなかった。
     ***
いつの間にか坂を下りていた。通りを渡って、駅のそばまで歩いてきた。この季節、辺りの田園の匂いで咽かえるほどだ。しかしそれは、決して不快なものではなかった。
駅に着く。彼女と同じ方面だった。
「どこまで乗るの?」
「実家、滋賀だから」
「そう、じゃ、途中まで一緒ね。私は、市内なの。実家暮らしで」