私も、心がウキウキしてくる。どうしてだろう。こうして、幸せそうな人々に囲まれていると、まるで、自分までもが幸せであるかのように思えてしまう。でも、実際、私は幸せなんだろうか?
結婚前の私は、結婚後の生活に夢を抱いていた。きっと、いつも夫の事を考えているんだろうな、そしてそれは、この上なく幸せな時間なんだろうな、と。半分は当たっていた。私は、今も、いつも夫の事を思っている。そしてそれは、はじめは幸せだった。ちょっとでも夫の帰りが遅いと、窓から外を見詰め、夫が家の前の通りの角を曲がるのを待ち焦がれていた。そして、夫が角を曲がる姿が見えると、それはもう、全てが満たされるのだった。
急いで食事を温め、かなり遅めの夕食を夫と食べるのが楽しかった。会話は弾んだ。夫は、静かにうなずいてくれた。夫は、あまり自分の事を話さない人だったが、それでも、時々ぼそぼそと話す、その日の会社での出来事は、私にとって、どんな小説やどんな映画よりも楽しかった…。
     ***
大通りに出た。今日は休日ではないので、歩行者天国はやっていなかった。信号を待ち、大通りを渡って、細い路地裏に入り、古いビルの中の、一軒の画廊に入った。ここには時々来るけど、いつ行っても、大抵、私一人だ。
今日も誰もいなかった。
数枚の絵が、壁に掛けてあった。そして、これらの絵を描いた画家であろう若い男性が、所在なさげに、部屋の隅のいすに座っていた。その画家は、ここでは初めて見る人だった。6畳ほどの狭い室内は、絵を除いては、壁といい椅子といい、すべてが白一色だった。
「こんにちは」
挨拶すると、画家は黙って、しかし、少しにっこりしながら会釈を返してくれた。