それにしても、変わった雰囲気を持つ絵だった。いつまでも、絵の前に立ち尽くしていたい気がした。
私以外に、誰も来ないのが不思議だった。路地の、少し奥まったところにあるとはいえ、他の画廊と遜色のない場所で、ここらあたりにあるのは、どこも同じような立地のところばかりだったから。
「あまり、人が来ませんね」喋った後、失礼だったかとも思った。
「えぇ…。そうですね。やっぱり、たくさんの人に見て頂きたいと思っているのですが。」
「…」
「…まだ、それだけのものじゃ無いという事なんでしょう。」
画家はボソッと呟いた。そんなことないです、と言いたかった。しかし、彼の目は、そんな安易な励ましを拒んでいるようだった。だから何も返せなかった。
いつの間にか、画家もまた、私の隣で自分の描いた絵の前に立って、じっと絵を見据えていた。