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ふと、空腹になっている自分に気が付いた。
何か食べなきゃと思った。そういえば、お昼まだだった。昔から、お腹がすけば、もう、それ以外の事を考えていられない性質だった。今日はたくさん食べたい、と思った。そう思えば思うほど、一層、痛いくらいお腹が空いてきた。
と、冷たいものがぽつりと頬に当たった。雨?と思ったが、その瞬間では、それほどまだ継続してはおらず、最初の小さな感触に次いでは、しばらくは続きがなかった。しかし、それでも歩いているうちには、最初の2、3滴が5、6滴と変わり、段々と歩くほどに、その感触はさらに確かなものへとなって行った。堀の水にも、雨の模様が徐々にはっきり描かれ出し、そうして5、6分後には、すっかり、雨と呼べる状態になった。いくらか風までも出た。
時刻は、2時を少し過ぎたところだ。まだ、ぎりぎりランチタイムの内なので、まずはどこか、ちゃんとした食事が摂れる店に行こう、それから、喫茶店に行って本でも読もう、そう思いながら、銀座への道を足早に進み、皇居公園を後にした。
傘を持ってきてよかったと思った。