修論審査を終えて④

大学から堀を隔てた向こう側にあるお城に行ってみた。修士論文が完成するまでは、大学周辺を気分転換に散歩しても、堀のこちら側から眺めるだけだった。いつか行こうと思っていたのが、やっと今日になった。受付で「天守へはこの坂を登ってください。梅林へはあちらです。今朝みたら10本程度咲いていましたが、まだ少し梅の見頃には早いかと思います」と言われたが、迷わず梅林の方に向かった。大学側の堀に沿って歩いてみたかったからだ。

 

いつもとは違い、堀の反対から見る風景は、よかった。大学側とは違い、水面からだいぶ高いところに登ることができた。城山の北西側だから、少し陰り、石垣の上にはうすく苔なんかもはえていた。木々の間からは日が静かに差していた。

 

数が少ないとはいえ、梅の花にはかすかな香りも感じられた。良い香りだった。ほんとうにもうそこまで春が来ているのだと思った。

 

三重櫓。湖岸道路から交差点を大学側に曲がれば、いつも見える。今日初めて、その建物の中に入った。天守の中は人が多いから避けた。太鼓門櫓。天秤櫓。12時の鐘も間近で聴いた。前触れもなく鳴らされる音に、大きな犬がびっくりしていた。

 

城が築かれるよりも昔の信仰のあとと思われる、磐座みたいな場所もあった。

 

たっぷり2時間近く、とても満ち足りた時間になった。そのあと研究室に戻って、片付けに取り掛かった。あと一ヶ月程で、慣れ親しんだこの場所から、引き上げないといけないからだ。大学院の2年間が終わるのも、もうすぐそこまで来ているのだ。