これは、村上春樹が描いた、世界の終りだ。
ヴィルヘルム・ハンマースホイの描く世界。風景画の、雲は、作者の想世界の果てであり、意識の層が、あの、幾重もの雲。死者の町。人々の時間は、重ならない。時を共有せざる者たちの集まり。夢、あくまで、画家の想の世界の話。死者の町?ちがう。生きていない人達。人間じゃない、画家の想念によって象られた人の形をした人々。だから、細部が曖昧なまま。この、描かれた世界の周囲には、もう、世界は存在していない。絵の外に広がりを持たない、一場面だけの世界。画家の脳に映った、一場面だけ。