2022年1月29日

ほんとうなら今ごろ、新幹線に乗って東京方面に向かっているところだった。 今日は、横浜能楽堂で「関寺小町」の日だ。もしかしたら、14時の開演よりかなり早めに着くよう朝早く新幹線に乗り、能楽堂に行く前に、かつて住んでいた大森の、毎日のように通って…

恋せぬふたり⑥

第三話のメモ。 好きなアイドルには、活動していなくても「推しは推し」と言い切れるのに、恋人には、キスをするとか、セックスをするとか、行為を求めてしまうことの矛盾。 活動休止中でも解散と言わない限り継続するものとしての関係。それに対して、現に…

恋せぬふたり⑤

母親のさくらのことが気になってならない。もしかしたら、さくらはアロマンティックあるいはアセクシュアルなのではないかと思った。 なぜそう思ったのかというと、最初のきっかけは、名前だった。さくらと咲子の名前が似ていること(そしてそれと対照的に、…

恋せぬふたり④

第一話を観たときには、咲子と羽がそれぞれに同じくらいのボリュームを持った主人公で、二人の物語がポリフォニックに描かれるのだろうと思っていたが、第二話を終えて、そうではなく咲子のみが主人公の物語だと思った。ドラマの世界は咲子に寄り添って移ろ…

恋せぬふたり③

今日は少し喉が痛く、頭も重たい。休み明けの月曜日なのに少し体調が優れない。 だから夕食後には黒にんにく食べて、風呂入る前に黒酢飲んで、しっかり湯船に浸かってあったまった。そして22時45分、こたつに入ってテレビをつけた。今日は一週間楽しみにして…

恋せぬふたり②

風呂に浸かりながら昨日観たドラマ「恋せぬふたり」のことを思い返していたら、なんとなく気になったことがあるので、忘れないうちに整理しておこう。 喪失について 物語のはじめに、咲子は親友の千鶴を失っている。高橋も、半年前に育ての親である祖母を喪…

恋せぬふたり①

9時のニュースが終わって新聞のテレビ欄を見たら、今日から新しいドラマが始まることに気づいた。番組ウェブサイトを覗いてみたら、アロマンティック・アセクシュアルという恋愛的・性的指向の人が主人公の物語だと知り、興味が湧いた。「六畳間のピアノマ…

箱根駅伝を視ながら朝ごはんを食べたあと歯磨きをして、風呂掃除から部屋に戻ると、帰省中の妹家族が買い物に出かけたあとだった。天気がいいから室内に干された洗濯物は外に出されていた。両親が福袋を見てくると言って出かけていった。 近くの小さな神社に…

隣の部屋で、両親がテレビを観ている。紅白歌合戦で、BUMP OF CHICKENが歌っている。 大学生の頃、カラオケで、部活の先輩がいつも歌っていた歌だ。なつかしい。 と思っていたら、「おかえりモネ」の主題歌になった。キッチンのテーブルでこれを書いている私…

先日、休みの日に、西国三十三所のひとつ松尾寺を訪ねた。当初は、同じく三十三所の長谷寺へと思ったが、紅葉時期に重なりおそらく相当混雑しているだろうということで、行き先を変えた。 舞鶴若狭道を使えば住む町から2時間弱の、快適な道中だった。 舞鶴…

朝から自動車で外出した。湖の向こう側にある小さな温泉に久しぶりに行ってみたいと思った。最近、忙しい日々が続いていたので、どこかで骨休めがしたいと思っていた。 道中、目に映る山々の木々は色づいていた。色味は、どちらかというとやさしい黄色がまさ…

大学の部活の後輩の訃報が届いた。 彼女とはもう15年近く会っていなかった。この過ぎ去った時間が夢のように思えた。 私は、大学で能の稽古をする部活に入っていた。その部活では三回生でようやく自分の舞いたい仕舞を選ぶことができる。私は班女舞アトを選…

投票

10月31日は仕事なので、本当は投票日当日に投票したかったが、今日、期日前投票に行ってきた。昨晩、どの候補者と政党に入れようか考えていたものの、今朝起きてから、姪の七五三の晴れ姿や、痛めていた腰を休めに温泉に浸かったりとかしているうちに、なん…

記録

私は食べることが好きだ。最近では特に、美味しい魚に出会いたい。 交際している人も、食べることが好きだ。そして刺身が一番好きだと言う。海鮮丼だと、温かいご飯の上で刺身が温まるのがイヤなので、刺身とご飯は別々が良いと言う。私も同感だ。 職場の、…

伊藤計劃「ハーモニー」を読んだ。いま、この小説を読むことができてよかった。 もう他界して数年経つ母方の祖母のことを思い出した。 母方の祖母は他界するまでの数年の間、認知症が進行し、徘徊とかするようになっていた。そのとき祖母と同居し、しかしそ…

絵を見る

風呂上がりに、ほてった体を冷まそうと、タオルを肩にかけ、下着姿で、ダラリと、うす暗がりの部屋で、椅子に座っていた。 目の前にいつもの絵がかかっていた。それをボーッと眺めていた。 不意に、絵の向こうに、世界が広がっているように思えた。こちら側…

今生きているのとは違う人生を、もしかしたら歩んでいたかもしれないなと、ときどきそんな考えに沈み込む。 昔、誰かと関係があったときの、一人の時間によく聞いていた音楽を、何かの拍子に聞いてしまったとき。音楽がその当時の私の魂に触れ、本当に久しぶ…

昨年の9月末に、朝、自動車に乗ってラジオをかけていたら、アララさんというリスナーからの、彼女の誕生日にあたる日のリクエスト曲で、「風をあつめて」が流れた。 アララさんは、ALSの確定診断を受けたばかりだった。診断が下ったその日を境に、「クラゲ…

二つの世界

現実には、37歳で、日々仕事をし、生活を送っている。今日は休日で、午前中は喫茶店で人と会い、そのあと髪を切りにいき、昼食にモスバーガーを両親の分も買って帰り、家で食べた。午後には、自動車の修理にいった。明日はまた仕事だ。土曜日も午後に少しだ…

三連休の最終日、何もやることがなかったので、自転車で、通っていた高校まで行ってみた。 この20年で、ところどころ街並みが変わっていた。当時あった建物がなくなっていたり、当時なかったお店ができていたりした。もちろん20年前と変わらない風景もあった…

悪いこと

凶悪な事件とか、戦争とか、災害とか、「悪いこと」はなぜ起きるのか。もし「悪いこと」が起きなければ、私たちの住む世界はどうなっているのか。 「悪いこと」が起きたとき、当事者にとっては、特に被害者にとっては、その人の人生における痛恨事であって、…

頭痛

日曜にワクチンの1回目摂取があった。翌月曜の朝は、少し腕に痛みを感じたが、仕事に行った。それでも何かあったときすぐ帰れるようにと、念のため自動車で行った。 午前中は問題なかった。でも昼食後から、少しずつ、痛みが頭の中で小さい部分からだんだん…

世界が変わることについて

飛行機に乗って、世界の境界を越えたことがあった。目が覚めたとき、窓の外には、別世界が広がっていた。そこには、それまで自分が含まれていた世界におけるのとは、別のつくりの、顔や、皮膚の色や、言語を持つ人々がいた。 あるいは、わたしたちの感性にあ…

目覚ましが鳴る前の日曜の朝が好きだ。一階で、両親は早くに起きて、朝ごはん食べながら会話しているのが聞こえる。寝室の戸の隙間から、卵を焼いた匂いが入ってくる。洗濯機を回す音が聞こえる。網戸の窓外から、虫の音と、涼しい風が入ってくる。天井を眺…

私の住む県に2回目の緊急事態宣言が発令されてから1週間。 宣言以前と以後で、私の生活スタイルは変わらない。それは、宣言の前から、できるだけの対策を心がけていたからというよりも、宣言が出ただけでは変えようもないくらいに、この状況に慣れてしまっ…

夕方まで、家で寝転んで本を読んでいた。あと数ページで読み終えるところに来て、少し疲れたから、読んでいたページに指をはさんで、起き上がり、サンダル履いて、本持ったまま外に出た。昼間は暑かったが、この時間には風もあり、涼しかった。 路地の、入っ…

野村幻雪師

亡くなられた野村幻雪師に哀悼したい。 師の舞台に初めて接したのは、2008年6月の「関寺小町」だった。この舞台に居合わせることができたのは、今思えば、非常に幸運なことだった。 とても感動したことを覚えている。確かに、最奥の秘曲をようやく観ることが…

仕事で研修を受けに、今日は、家から自動車で出かけた。研修会場まで1時間と少しかかった。いつもならあっという間の道も、通勤時間と重なったことで、途中、渋滞している箇所があった。 研修は、実際にペンを動かすものだった。 帰り道に、3月まで通って…

物語

我々は二つの世界を生きている。 しかし現実の我々は、そのうちの一つの世界だけに確かさを感じている。 なぜならもう一つの世界は、我々に常に明示的に開かれているものではないからだ。 その世界に存在する私は、この世界に生きる私の影のような存在。しか…

記憶③

小学5年か6年の国語の教科書に、『大草原の小さな家』のちょっとした感想文が載っていた。幌馬車の絵が挿絵に描かれていた。授業で取り上げられることはなかったが、小学校の図書館から、『大きな森の小さな家』を借りて読んだ。その福音館書店版の、表紙…