恋せぬふたり⑤

母親のさくらのことが気になってならない。もしかしたら、さくらはアロマンティックあるいはアセクシュアルなのではないかと思った。

なぜそう思ったのかというと、最初のきっかけは、名前だった。さくらと咲子の名前が似ていること(そしてそれと対照的に、博実とみのりは名前が似ている)。この名付けが何かの記号ではないかと思った。さらに、さくらと咲子の髪型がとても似ていることも(そしてそれと対照的に、博実のひげとみのりの妊娠も、おとこ性とおんな性を表象している気がする)。

そして決定的だったのは、羽と咲子が恋愛もセックスも伴わない関係と説明された時の、さくらが発した「納得できない」という言葉だった。「理解できない」ではなく「納得できない」と言ったことに、いろんな想像をした。もしかしたら、さくらの本性はアロマンティックあるいはアセクシュアルだったかもしれないのに、彼女の成長過程で、世間で「普通」とされる性役割の押し付けを、反発も意識できずに内面化するしかなかった半生だったのではないか。だから、自分が自らに無意識に強いてきた「普通」の恋愛的・性的指向を、二人(咲子・羽)は自らを定義する明確な言葉とともに「そうではない」と生きようとする姿が、「理解できない」ではなく「納得できない」ということだったのではないだろうか。咲子の家族の中で、さくらが突出して感情をあらわにしていたように思ったが、この反応の強さは、さくらの無意識が、そのような展開の中で目を覚まそうとしていたからの強さではなかっただろうか。

 

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ドラマでは、「城」の外の世界がいろいろに描かれている。「城」の外の世界とは、「世間」「職場」、そして「家族」といったものだった。

咲子は羽に「恋愛感情抜きで家族になりませんか」と言った。羽は、「家族」ではなく「味方」という言葉を使った。

咲子が出会った「城」は、羽が育った「祖母の家」だった。その城の中で、咲子はかつての祖母の部屋を使うことになった。

これから、祖母の家が、そして祖母が、どのように、ドラマの中で描かれることになるのかも、丁寧に気にしていきたい。

 

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まだ二話だけれども、これからも想像力を存分に働かせながら観ていきたいと思った。