2021-01-01から1年間の記事一覧

隣の部屋で、両親がテレビを観ている。紅白歌合戦で、BUMP OF CHICKENが歌っている。 大学生の頃、カラオケで、部活の先輩がいつも歌っていた歌だ。なつかしい。 と思っていたら、「おかえりモネ」の主題歌になった。キッチンのテーブルでこれを書いている私…

先日、休みの日に、西国三十三所のひとつ松尾寺を訪ねた。当初は、同じく三十三所の長谷寺へと思ったが、紅葉時期に重なりおそらく相当混雑しているだろうということで、行き先を変えた。 舞鶴若狭道を使えば住む町から2時間弱の、快適な道中だった。 舞鶴…

朝から自動車で外出した。湖の向こう側にある小さな温泉に久しぶりに行ってみたいと思った。最近、忙しい日々が続いていたので、どこかで骨休めがしたいと思っていた。 道中、目に映る山々の木々は色づいていた。色味は、どちらかというとやさしい黄色がまさ…

大学の部活の後輩の訃報が届いた。 彼女とはもう15年近く会っていなかった。この過ぎ去った時間が夢のように思えた。 私は、大学で能の稽古をする部活に入っていた。その部活では三回生でようやく自分の舞いたい仕舞を選ぶことができる。私は班女舞アトを選…

投票

10月31日は仕事なので、本当は投票日当日に投票したかったが、今日、期日前投票に行ってきた。昨晩、どの候補者と政党に入れようか考えていたものの、今朝起きてから、姪の七五三の晴れ姿や、痛めていた腰を休めに温泉に浸かったりとかしているうちに、なん…

記録

私は食べることが好きだ。最近では特に、美味しい魚に出会いたい。 交際している人も、食べることが好きだ。そして刺身が一番好きだと言う。海鮮丼だと、温かいご飯の上で刺身が温まるのがイヤなので、刺身とご飯は別々が良いと言う。私も同感だ。 職場の、…

伊藤計劃「ハーモニー」を読んだ。いま、この小説を読むことができてよかった。 もう他界して数年経つ母方の祖母のことを思い出した。 母方の祖母は他界するまでの数年の間、認知症が進行し、徘徊とかするようになっていた。そのとき祖母と同居し、しかしそ…

絵を見る

風呂上がりに、ほてった体を冷まそうと、タオルを肩にかけ、下着姿で、ダラリと、うす暗がりの部屋で、椅子に座っていた。 目の前にいつもの絵がかかっていた。それをボーッと眺めていた。 不意に、絵の向こうに、世界が広がっているように思えた。こちら側…

今生きているのとは違う人生を、もしかしたら歩んでいたかもしれないなと、ときどきそんな考えに沈み込む。 昔、誰かと関係があったときの、一人の時間によく聞いていた音楽を、何かの拍子に聞いてしまったとき。音楽がその当時の私の魂に触れ、本当に久しぶ…

昨年の9月末に、朝、自動車に乗ってラジオをかけていたら、アララさんというリスナーからの、彼女の誕生日にあたる日のリクエスト曲で、「風をあつめて」が流れた。 アララさんは、ALSの確定診断を受けたばかりだった。診断が下ったその日を境に、「クラゲ…

二つの世界

現実には、37歳で、日々仕事をし、生活を送っている。今日は休日で、午前中は喫茶店で人と会い、そのあと髪を切りにいき、昼食にモスバーガーを両親の分も買って帰り、家で食べた。午後には、自動車の修理にいった。明日はまた仕事だ。土曜日も午後に少しだ…

三連休の最終日、何もやることがなかったので、自転車で、通っていた高校まで行ってみた。 この20年で、ところどころ街並みが変わっていた。当時あった建物がなくなっていたり、当時なかったお店ができていたりした。もちろん20年前と変わらない風景もあった…

悪いこと

凶悪な事件とか、戦争とか、災害とか、「悪いこと」はなぜ起きるのか。もし「悪いこと」が起きなければ、私たちの住む世界はどうなっているのか。 「悪いこと」が起きたとき、当事者にとっては、特に被害者にとっては、その人の人生における痛恨事であって、…

頭痛

日曜にワクチンの1回目摂取があった。翌月曜の朝は、少し腕に痛みを感じたが、仕事に行った。それでも何かあったときすぐ帰れるようにと、念のため自動車で行った。 午前中は問題なかった。でも昼食後から、少しずつ、痛みが頭の中で小さい部分からだんだん…

世界が変わることについて

飛行機に乗って、世界の境界を越えたことがあった。目が覚めたとき、窓の外には、別世界が広がっていた。そこには、それまで自分が含まれていた世界におけるのとは、別のつくりの、顔や、皮膚の色や、言語を持つ人々がいた。 あるいは、わたしたちの感性にあ…

目覚ましが鳴る前の日曜の朝が好きだ。一階で、両親は早くに起きて、朝ごはん食べながら会話しているのが聞こえる。寝室の戸の隙間から、卵を焼いた匂いが入ってくる。洗濯機を回す音が聞こえる。網戸の窓外から、虫の音と、涼しい風が入ってくる。天井を眺…

私の住む県に2回目の緊急事態宣言が発令されてから1週間。 宣言以前と以後で、私の生活スタイルは変わらない。それは、宣言の前から、できるだけの対策を心がけていたからというよりも、宣言が出ただけでは変えようもないくらいに、この状況に慣れてしまっ…

夕方まで、家で寝転んで本を読んでいた。あと数ページで読み終えるところに来て、少し疲れたから、読んでいたページに指をはさんで、起き上がり、サンダル履いて、本持ったまま外に出た。昼間は暑かったが、この時間には風もあり、涼しかった。 路地の、入っ…

野村幻雪師

亡くなられた野村幻雪師に哀悼したい。 師の舞台に初めて接したのは、2008年6月の「関寺小町」だった。この舞台に居合わせることができたのは、今思えば、非常に幸運なことだった。 とても感動したことを覚えている。確かに、最奥の秘曲をようやく観ることが…

仕事で研修を受けに、今日は、家から自動車で出かけた。研修会場まで1時間と少しかかった。いつもならあっという間の道も、通勤時間と重なったことで、途中、渋滞している箇所があった。 研修は、実際にペンを動かすものだった。 帰り道に、3月まで通って…

物語

我々は二つの世界を生きている。 しかし現実の我々は、そのうちの一つの世界だけに確かさを感じている。 なぜならもう一つの世界は、我々に常に明示的に開かれているものではないからだ。 その世界に存在する私は、この世界に生きる私の影のような存在。しか…

記憶③

小学5年か6年の国語の教科書に、『大草原の小さな家』のちょっとした感想文が載っていた。幌馬車の絵が挿絵に描かれていた。授業で取り上げられることはなかったが、小学校の図書館から、『大きな森の小さな家』を借りて読んだ。その福音館書店版の、表紙…

記憶②

小学校の運動場を囲うフェンスから、家のキッチンの窓までは10mも離れていなかった。休み時間にフェンス越しに大きな声で呼びかければ、声に気付いた母が窓から顔をのぞかせた。そのようにして忘れ物をフェンス越しに受け取ったことがある。体育の時間中に家…

記憶①

両親が育った湖のほとりの街の病院で私は生まれた。 それから父の仕事のため、中部地方にある大都市圏のニュータウンと呼ばれる地域で、私は育った。 先日何気なくインターネットで検索したら、その地域が開発される以前に撮られた、上空からの写真があった…

re:

(とてもプライベートな表現です。) *** オリンピックの閉会式が終わりました。 私たちが含まれる世界に、何か、スウィッチが押されたように思いました。その先の世界に、何が待っているのか、あるいは、私たちは、これから世界で何をしていくのか、そん…

かつて職場の上司だった方で、定年まで数年を残して退職された方と、先日、喫茶店で会った。 *** その数日前に、その方と、他に二人(この方たちも同じ職場で働いていた、元上司と同世代の人)と、私の、4人でお遍路に行った。私以外は今回が3回目で、…

駅からの帰り道、空が、この季節のこの時間に特有の色合いを帯びていた。夕陽からくる紫と赤とが、少し積乱雲めいた分厚い雲をまだらに染め、雲の向こうの空の、色褪せたような青と混じりあい、なんとも言えない色調で、それはまるで切なさを絵に描いたよう…

通勤の電車で高校生と乗り合わす。私にも、彼らのようなときがあったなあと思う。彼らぐらいのとき、私は、自分の「今」が嫌でたまらなかった。自分の醜さと格闘しているようであった。それは痛みでもあった。重圧でもあった。どこかに捨て去ることができた…

早朝、両親が遠くの街に住む妹の家にいった。私は、二人を見送った後、洗濯物をほし、風呂掃除をし、それから眼鏡を買いに車で出かけた。 これまでフレームなしだったから、次はありのを選んだ。5年前からかけている眼鏡のレンズが、気づかないうちに黄色が…

いつもより遅くなった駅からの帰り道、空気に、もはや水分が含まれていないのを感じた。いよいよ梅雨明けだと思った。夜風が心地よかった。 今日は電車で、職場のある駅を過ぎた向こうにある、遠くの都会まで行った。いつもより長い時間を電車に乗っていると…