恋せぬふたり④

第一話を観たときには、咲子と羽がそれぞれに同じくらいのボリュームを持った主人公で、二人の物語がポリフォニックに描かれるのだろうと思っていたが、第二話を終えて、そうではなく咲子のみが主人公の物語だと思った。ドラマの世界は咲子に寄り添って移ろい、そのような咲子の世界の物語における、羽は、ある意味で主人公が出会う登場人物としての役割でしかない。

しかしもちろん、登場人物としての羽もまた背後に物語を抱えている。今のところわかっているのは、彼が両親と縁を切ったことと、祖母の愛情を一身に受けて育ったこと。だが、両親のことも祖母のことも、羽によるエピソードの回想としてすらドラマでは今のところ、描かれない。

そして、第二話で思ったのだが、このドラマを観る私は祖母の視点と同じだ、ということだ。咲子と羽の生き辛さが過剰なまでにあからさまに描かれることで、自然と、ドラマを観る私は、二人を見守るようになっていた。応援したくなった。だが死者は生者をただ見守るしかできないのと同じように、テレビの画面を通して観る私も、ドラマの世界の二人をただ見守るしかなかった。

しかしここで、咲子は祖母がかつて暮らしていた部屋に住むことになった。

このことによって、ドラマの世界の中で、咲子の体にまるで祖母の霊が憑依したかのようであり、そしてドラマを観る私も、祖母の憑依を受けた咲子の目を通して、羽を見守ることになった。

テレビ画面を通して、私は、咲子を見守っている。と同時に、咲子に憑依した祖母である私は、咲子の目を通して、羽を見守ることになる。とりあえず第二話までを観たところで、こんな構造のドラマじゃないかと思った。