若い父親の必死な表情を見ていて、いいな、と思った。
良い父親だということが、必死な表情は素振りを見ていてよく伝わってきた。きっと幸せな家庭なんだ。奥さんも子供も幸せなんだろう。ほんとうに、ちゃんとした一家なのだろうと思った。
私は一人で歩いているという事を思う。誰も、今、肩を並べる相手がいない。肩から大きめのカバンを斜めにかけ、両方のポケットに手を入れる。殊更寒いとは思わないが、それでもポケットに手を入れる。ポケットの中で、手を握りしめる。すぐに汗ばむが気にしない。
皇居の公園を出た。私は今どこに向かっているのだろう。どこに行けばいいのだろう。どうしたいのだろう。