静かに食べていると、店内には、私の他には、夫婦らしき男女が一組、あとは、この店のアルバイトの女性に、レジのおばあちゃん。時折、夫婦がぼそぼそと話す他には、誰も何も話さない。この夫婦は既に食事は終わっており、コーヒーを飲んでいるところだった。
かなりの高齢で、今日はデートなんだろうか。二人とも、落ち着いた身なりの中にもかなりセンスが良いことが伺える。奥さんの方は特に美しくて、白髪まじりの髪の毛をきれいにまとめている。いすに座った姿勢もよく、今も充分美人だが、若い頃はきっと、ものすごく美人だったのだろう。
この人の落ち着いたたたずまいに、私は少しの間見とれてしまう。
「銀座も変わったね」夫の方が話すのが聞こえる。「馴染みの店も、ここと、あと数軒しか残ってないよ」
「そうですねぇ」店のおばあちゃんが答える。奥さんは黙っている。