恋せぬふたり①

9時のニュースが終わって新聞のテレビ欄を見たら、今日から新しいドラマが始まることに気づいた。番組ウェブサイトを覗いてみたら、アロマンティック・アセクシュアルという恋愛的・性的指向の人が主人公の物語だと知り、興味が湧いた。「六畳間のピアノマン」と「俺の家の話」を観ていらい、久しぶりに、シリーズもののドラマを最初から観てみようと思った。

ドラマは自分を重ねもしながら観た。「大人たちの言葉」が代表する、世間というのっぺらぼうが持つ「正しさ」の前提にあることがらにどうしてもつまずいてしまう者が発する、誰にも受け止めてもらえない微細な信号、それが咲子の表情だった。こんな表情を私もしていたし、38歳になろうとする今も、時々している。だから高橋が咲子に「しんどそうでしたよね」と言ってくれた時の咲子の嬉しさが、痛いほどわかった。

微細な信号をすくいとれる人間。そして信号をすくいとられたことによって救われる人間。そんなふたりが出会ったところまでが、今日の話で描かれていた。

これから8回のシリーズを、毎週丁寧に観ていきたいと思った。