改札を抜けてホームへの階段を降りると、電車はすぐにやって来た。周囲の乗客の様子から、今日は平日だという事を改めて思った。向かいの席でパソコンを睨んでいる若い営業マン風の男を見て、後ろめたい気持ちも少しした。しかし、そんなことも直に忘れた。
一人でいるとき、考えることはいつも同じだ。いつも同じ一つの問いが、私の周囲と言わず中と言わず、ぐるぐると旋回した。果たして、俺の中には種があるのだろうか。芽吹くべき種を、咲くべき何かを、俺は育めているのか。結局、就職していつの頃からか、この一つの問いの前で俺はいつも逡巡している。そうして、そこから動き出せずにいる。遠くに向かいたがっている歩は、結局、狭い一所を歩きまわっている。それが何の解決にもつながらない事を知っていながら。
今日だって、会社を休んで何が出来るのだろうか?絵を見に行ったところで、何が俺を待っているのだろうか?
夢は残酷でありながら、それでいて儚い。現に生きている自分には、生活という名の怪物が重くのしかかる。俺は、喰っていかなくてはならない。金を稼げるやり方で、金を稼がないといけない。