しかしその人には、相沢の知らない男性が恋人として存在するようになった。相沢が東京に住むようになって、しばらくしてからその交際は始まり、相沢は、それを彼女からのメールで知った。彼女から、相沢が問いもしないことを告げてきた。それは唐突な連絡であった。だからどうするということも、相沢にはできなかった。その時も、彼女に対する自分の思いを、相沢は決して口にしない人であった。否、出来ない人であった。
彼女からそのことを告げられた日は、東京に来て一年目の夏、残暑厳しい日であった。