何か食べたいと思ったので、駅からすぐの安いそば屋に行く。席はすべて埋まっていたので、しばらく待った。それでも五分ほどだった。ここに来た人が大抵食べるいつものそばを頼む。一分で出来る。どこがどうという訳でもないが、こうして気軽に食べることのできるこの店が相沢は好きだった。東京では珍しく関西風の甘めの味付けだった。一味とうがらしをたくさん入れて食べ、汁まで飲み干した。
食べ始めてから食べ終わるまでに十分。
「さて」と心の中で思う。「どこに行こう」
昼を過ぎたばかりで、今日一日はまだたっぷりある。とりあえず喫茶店に行くことに決め席を立つ。コップの水を飲みほしてそのまま去る。相沢の席には待っていた次の客がすぐに座る。ここはいつも繁盛している。
街はとても賑やかだ。