祖母の思い出②

(とりとめもなく思い出されることを書く。)

 

私がまだ学生の頃、京都の叔母に会いにいく祖母と、大学に通学する私とが、同じ電車に乗り合わせたことがあった。窓ぎわの席に祖母が座り、通路側の席に私が座り、一時間ばかりの車中で、どんな会話を交わしたか覚えていないが、当時、リュックサックを背負って、自分の足で歩いて、時々そのような遠出をする祖母のことが、いまは懐かしい。

京都駅の改札口を出たところで、叔母が待っていてくれた。授業まで時間があったので、駅のミスタードーナツで、3人でドーナツを食べた。それから授業があるからと、私だけ席を後にした。そのときのドーナツ代は、祖母が出してくれた。祖母と叔母は、このあと四条に買い物に行くと言っていた。

祖母は、京都で過ごす何日間かの間に、いつも決まって、一度は高島屋に服を買いに行った。そのように昔、祖母が京都で買ってきた服を、それはいかにも祖母が好きそうな色合いだ、母は選んで、棺の中で最期、祖母に着せた。ゆったりとしたサイズの、薄く灰色がかった、でも決して暗くない色合いのきれいなセーターと、同系統の色合いのズボンだった。そして、明るい色の靴下を履かせた。

祖母の通夜の後、私だけ葬儀場に残り一夜を過ごした。葬儀場に準備された宿泊できる部屋で、祖母と二人だけで過ごした。死者と並んで眠ることが、少しも怖くなかった。わずかずつ顔が張っていくのか、時々棺の窓を開けて覗いたら、時間を追うごとに、表情が若返っていくように思えた。