私はこれまで人と深い関わりを持たずに生きてきた。それでも充分だと思っていた。でも実際はそうじゃなかった。私はある女性と深くかかわりたいと思った。深く関わりたいと思った時、しかしその時既に、彼女は私の前から去る決心をしていた。そうして自分ではない男と共に生きていくと言った。結婚すると告げて去って行った。
私は今はっきりと理解している。これは自分のせいなのだと。彼女はずっと待っていてくれたかもしれないのに、それなのに私の方で自分の心をよく見ることが出来ていなかった。だから何も言い出すことが出来ず、そのまま時を失ったのだと。
好きな対象をはっきりと好きだと言いたい。自分の信念に自信を持ちたい。自分の思いの在り処を、いつまでも見つめていたい。そうしてその思いに対して、偽らずに生きていきたい。今は強くそう思う。…
大勢降りたと思ったら、もう新宿だった。私も降りよう。ホームの階段を降り、早足で改札に向かう。人がとても多い。