疲れたと、相沢は言った。
「疲れた。何をするにも、疲れた。俺は、今日限りで会社を辞める。実は、一つだけ、人生でやりたいことがあるんだ。」
何を?
「俺は、小説家になる。今まで貯めた金で、一年間山に籠もる。一年かけて、いい小説を、一つ創る。」

相沢は、そう言って、本当に会社を辞めた。仕事は遅かった、あまりいい社員ではなかった。しかし、いなくなって一週間、職場にはある寂しさが漂った。相沢とは、そんな人間だった。